急に人が辞めたとき、「早く次の人を見つけないと回らない」と焦った経験はありませんか。
人員に余裕のない中小企業であれば、なおさらです。
とにかく誰かを入れなければ──その焦りが、かえって状況を悪くすることがあります。
この記事では、私自身の失敗をもとに、中小企業が「とりあえず採用」に走ってしまう原因と、焦らずに採用を進めるための具体的な手順をお伝えします。
私の失敗──「とりあえず」で関わる全員が不幸になった
去年の年末、うちで働いてくれていた派遣さんが急に辞めました。
業務は止められない。でも零細企業の弊社に余剰人員はいない。
焦った私は、派遣会社に連絡して、紹介された方をそのまま採用しました。
前の人が辞めた理由の整理も、次にどういう人が合うかの検討も、何もしないまま。
結果、社長との相性がまったく合いませんでした。
仕事のやり方もコミュニケーションの取り方もかみ合わず、職場の雰囲気は日に日に悪くなっていきました。
合わない環境で働く派遣さんもつらい。
合わない人と毎日顔を合わせる社長もつらい。
間に挟まれる私もつらい。
最終的に契約更新を止めることになり、それを本人に伝える役目まで回ってきました。
派遣さん本人に直接契約を止めると伝えたあの経験だけは2度としたくありません。
本当に辛い経験でした。
派遣さんに落ち度があったわけではありません。
合わない場所に来てもらってしまっただけです。
ミスマッチな環境に人を放り込んだ、私の判断ミスでした。
なぜ中小企業ほど「とりあえず採用」をしてしまうのか
私の失敗は、決して珍しいケースではありません。
中小企業には「とりあえず採用」に走りやすい構造的な理由があります。
まず、一人が抜けたときの影響が大きい。
従業員10人の会社で1人辞めれば、戦力の1割が一瞬で消えます。
残ったメンバーへの負荷がすぐに目に見えるので、「早く埋めなければ」というプレッシャーが強くなります。
次に、採用の判断が属人的になりやすい。
大企業には採用基準や選考フローがありますが、中小企業では社長や後継者が「なんとなく良さそう」で決めてしまうことが少なくありません。
焦りが加わると、その「なんとなく」の精度はさらに下がります。
そして、「人が足りない期間を耐える」という選択肢が見えにくい。
目の前の業務がきついと、「まず人を入れる」以外の解決策を考える余裕がなくなります。
でも実は、人が足りないきつさは一時的なものです。
ミスマッチな採用が生む問題のほうが、ずっと長く続きます。
焦らない採用のための3ステップ
次に同じことが起きたとき、私はこの手順で動くと決めました。
特別なことではありません。冷静なときなら当たり前にできることばかりです。
でも焦っているときは、この「当たり前」ができなくなります。
ステップ1 退職理由を整理する
前の人がなぜ辞めたのかを、まず言葉にします。
業務量なのか、人間関係なのか、待遇なのか。
本人が言わなかった理由もあるかもしれませんが、思い当たることを3つ書き出すだけでも、次に同じ失敗を繰り返す確率は下がります。
ステップ2 必要な人物像を言語化する
「誰でもいいから来てほしい」では、また同じことが起きます。
スキルだけでなく、職場の雰囲気やコミュニケーションのスタイルも含めて、「うちに合う人」の条件を社長や現場のメンバーと話し合います。
たとえば「指示を細かく出す社長のもとで働くので、自走型よりも確認しながら進められるタイプが合う」といった具体的な言葉にしておくことが大事です。
ステップ3 派遣会社・採用媒体とすり合わせる
ステップ1と2で整理した内容を、派遣会社や求人媒体にそのまま伝えます。
「事務ができる人をお願いします」ではなく、「前任はこういう理由で合わなかったので、次はこういうタイプの方を紹介してほしい」と具体的に伝えるだけで、マッチングの精度は大きく変わります。
この3ステップにかかる時間は、長くても1〜2週間です。
焦って採用して、数カ月後にまたやり直すことを考えれば、はるかに短い時間です。
「人が足りない期間」をどう乗り切るか
「手順はわかった。でも、その間の業務はどうするんだ」という疑問は当然です。
私が考えている対策は3つあります。
1つ目は、業務の優先順位をつけ直すこと。
人が減った状態で全部をこなそうとすると破綻します。
「今月は止めていい業務」を明確にして、社長や現場と合意を取っておきます。
2つ目は、短期の外注やスポット派遣を使うこと。
長期の人材を探している間のつなぎとして、1〜2週間単位で対応してくれるサービスを活用します。
あくまで「つなぎ」であって、「そのまま定着してもらう」前提にしないことがポイントです。
3つ目は、業務フローを見直すこと。
人が減ったタイミングは、実は業務を整理する良い機会でもあります。
「前任がやっていたけれど、実はなくても回る業務」が見つかることも少なくありません。
まとめ
急に人が辞めると焦ります。
焦ると「とにかく誰か」で採用してしまいます。
でも、その場しのぎの採用は、来てくれた人も、既存のメンバーも、自分自身も、全員を不幸にします。
採用だけは、焦らない。
もし今、人が辞めて「とりあえず誰か入れなきゃ」と思っている方がいたら、明日やることはひとつです。
前の人が辞めた理由を、ノートに3つ書き出してみてください。
それだけで、次の採用の判断は変わります。

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