「新しい設備を入れたいけれど、数百万の投資は正直キツい」──そんな思いを抱えている経営者の方は多いのではないでしょうか。
ものづくり補助金は、まさにそうした設備投資の負担を軽くするための制度です。
2026年2月6日から第23次公募が始まっており、申請締切は5月8日(金)17時。今回は賃上げ要件に大きな変更がありました。
この記事では、第23次公募の制度概要・変更点・スケジュール・準備の段取りを整理します。
「自社が対象になるのか」「何から手をつければいいのか」を判断する材料として、ぜひ活用してください。
ものづくり補助金とは?──制度の基本をおさらい
ものづくり補助金の正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」です。名前に「ものづくり」とありますが、製造業だけが対象ではありません。サービス業や小売業など幅広い業種の中小企業・小規模事業者が申請できます。
この補助金が支援するのは、革新的な製品・サービスの開発や、生産プロセスの改善に必要な設備投資です。たとえば新しい加工機械の導入、業務システムの構築、試作品の開発といった取り組みが対象になります。
ポイントは「革新的」という要件です。すでに同業他社で広く使われている技術や設備をそのまま導入するだけでは対象になりません。自社にとって新しい取り組みであり、それによって生産性が上がることを事業計画で示す必要があります。
制度の詳細は、ものづくり補助金総合サイト(https://portal.monodukuri-hojo.jp/)で公募要領が公開されています。
第23次で何が変わったのか──22次との主な変更点
第23次公募の枠組みや補助上限額は、第22次から大きくは変わっていません。
変わったのは「要件の中身」です。特に賃上げに関する部分が引き締められました。
まず、基本要件の賃上げ指標が変わりました。第22次までは「給与支給総額の年平均成長率2.0%以上」が求められていましたが、第23次では「従業員1人あたりの給与支給総額の年平均成長率3.5%以上」に変更されています。
この変更には2つの意味があります。ひとつは、成長率の基準が2.0%から3.5%に上がったこと。
もうひとつは、「総額」から「1人あたり」に変わったことです。
従業員数が増えた分だけ総額が伸びる──という計算が通用しなくなりました。純粋に1人あたりの給与を引き上げる計画が必要です。
さらに、第22次で設けられていた「賃上げ加点」が廃止されました。ただし、最低賃金の引き上げに取り組む事業者への加点は引き続き残っています。
大幅賃上げ特例(補助上限額の上乗せ)の仕組みも継続していますが、上乗せに必要な成長率の内訳が変わりました。基本要件が3.5%に上がった分、特例の上乗せ幅は+2.5%に。合計で年平均成長率6.0%以上という水準自体は変わっていません。
つまり第23次は、「制度の骨格は同じだが、賃上げの本気度をより厳しく問う回」と整理できます。
申請枠と補助額・補助率の整理
第23次公募には2つの申請枠があります。
ひとつめは「製品・サービス高付加価値化枠」です。革新的な新製品・新サービスの開発に必要な設備やシステムの導入を支援します。DXやGX(脱炭素)に関する取り組みを対象とする「成長分野進出類型」も、この枠のなかに含まれています。
補助額は従業員数に応じて変わります。下限は100万円で、上限は従業員5人以下で750万円、6〜20人で1,000万円、21〜50人で1,250万円、51〜99人で2,500万円です。大幅賃上げ特例を適用すると、上限が最大1,000万円上乗せされます。
ふたつめは「グローバル枠」です。海外市場の開拓に向けた設備投資やシステム導入を支援します。補助額は従業員数に関係なく一律3,000万円が上限で、特例適用時は最大4,000万円です。
補助率は、どちらの枠も原則として2分の1です。小規模事業者や再生事業者、最低賃金引き上げの特例を受ける事業者は3分の2に引き上げられます。
なお、補助金は後払いです。たとえば600万円の設備を導入して補助率2分の1が適用された場合、まず自社で600万円を支払い、あとから300万円が振り込まれる仕組みです。事前に資金繰りの計画を立てておく必要があります。
申請のスケジュールと準備の段取り
第23次公募のスケジュールは以下のとおりです(ものづくり補助金総合サイト https://portal.monodukuri-hojo.jp/schedule.html より)。
公募開始:2026年2月6日(金) 電子申請受付開始:2026年4月3日(金)17時〜 申請締切:2026年5月8日(金)17時 採択公表:2026年8月上旬頃(予定)
この記事の公開時点(2026年3月)で、締切まで約2か月です。逆算すると、今から動き始めてちょうどギリギリのタイミングといえます。
準備の段取りを整理します。
まず最優先はGビズIDプライムアカウントの取得です。電子申請に必須で、発行まで2〜3週間かかります。まだ持っていない方は、今すぐ申請手続きを始めてください(https://gbiz-id.go.jp/)。
次に、事業計画の方向性を固めます。「どんな設備を入れるのか」「それによって何が変わるのか」「売上や付加価値がどう伸びるのか」を整理します。ものづくり補助金の事業計画は10ページ程度の分量を求められるため、構想から仕上げまで1〜2か月は見ておいたほうが安全です。
あわせて、設備の見積書も取得しておきましょう。単価50万円以上の設備は、原則として2社以上からの見積もりが必要です。
そして、直近2期分の決算書(個人事業主は確定申告書)と、賃金台帳や労働者名簿といった人件費関連の書類も準備します。特に今回は1人あたり給与支給総額の計算が重要になるため、現状の数値を正確に把握しておくことが大切です。
採択率の現実と、事業計画で押さえるべきポイント
採択率の話もしておきます。直近の第21次公募では、製品・サービス高付加価値化枠の採択率は34.8%でした。おおよそ3社に1社しか採択されない計算です。
ものづくり補助金は「申請すればもらえる」補助金ではありません。事業計画書の内容で審査され、点数の高い順に採択されます。だからこそ、計画書の質が勝負を分けます。
審査で見られるのは、大きく分けて4つの観点です。
ひとつめは「革新性」。自社や業界にとって新しい取り組みかどうか。ふたつめは「実現可能性」。技術的に実行できるか、体制は整っているか。みっつめは「市場性」。その製品やサービスに需要があるか。よっつめは「収益性」。投資に見合う効果が見込めるか。
特に第23次では、賃上げ要件が厳しくなった分、「なぜ年3.5%の給与増を実現できるのか」を事業計画と矛盾なく説明することが重要です。売上が伸びる根拠、利益が確保できる見通し、そこから人件費を引き上げる道筋──この一連のストーリーに説得力があるかどうかが問われます。
「数字のつじつまを合わせる」だけでは不十分です。自社の事業の強みと投資の必然性を、審査員に伝わる言葉で書けるかどうか。ここが採択と不採択の分かれ目になります。
まとめ──まず確認すべきは「自社の賃上げ計画との整合性」
第23次のものづくり補助金は、枠組みこそ前回と同じですが、賃上げ要件の引き締めによって「本当に賃上げできる企業かどうか」がより厳しく問われる回です。
申請を検討するなら、まず確認してほしいのは「自社の現在の1人あたり給与支給総額」と「年3.5%の成長率が現実的かどうか」です。ここがクリアできる見通しが立つなら、設備投資の計画と合わせて申請準備を進める価値は十分にあります。
締切の5月8日まで、残り時間は多くありません。GビズIDの取得だけでも、今日始めておくことをおすすめします。
※ものづくり補助金は審査による採択制であり、申請すれば必ず補助金を受けられるものではありません。

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