「弟を会社に入れたいけれど、ケンカにならないだろうか」
「妻に手伝ってほしいが、家でも会社でも一緒だと息が詰まるのでは」
身内を会社に入れるかどうかで迷っている後継者の方は、少なくないと思います。
私自身も、まったく同じ不安を抱えていました。
この記事では、実際に身内と働いてみて気づいた「身内と関係が悪くなる本当の理由」と、その向き合い方をお伝えします。
なぜ「身内と働くと関係が悪くなる」と思うのか
身内を会社に入れることへの不安は、ごく自然なものです。理由は、おおむね次の3つに整理できます。
- 逃げ場がない。朝から晩まで同じ空間にいることになる
- 公私の境目が消える。家の話と会社の話が混ざる
- 感情を持ち込みやすい。他人なら言わないことまで言ってしまう
「だからギスギスするに決まっている」。私もそう思っていました。
私が夫婦で働いて気づいたこと
私の妻は、今年の4月にうちの会社に入社しました。
入社前、私は本気でビビっていました。
同じ会社にいたら、絶対にギスギスすると思っていたからです。
ところが実際には、喧嘩は増えませんでした。むしろ減りました。
顔を合わせる時間は確実に増えたのに、関係はよくなっている。
最初は自分でも理由が分かりませんでした。しばらく考えて、ひとつの答えにたどり着きます。
妻が、私の仕事を「理解してくれた」からでした。
人は一緒に働くまで相手を「想像」で見ている
家業のことは、家でもよく話していました。
今こういう状況で、こういうことに悩んでいて、と。妻もちゃんと聞いてくれていました。
それでも、どうしても伝わらないものがあったのです。
現場の空気。判断のしんどさ。社長と話すときの、あのヒリヒリした感じ。言葉にすると、どうしても薄まってしまいます。
ところが、同じ景色を見るようになった瞬間、それが一発で伝わりました。
何百回話しても伝わらなかったことが、現場に一日いただけで伝わったのです。
ここで気づいたことがあります。
一緒に働いていないと人は相手を「想像」で評価しているということです。
家で「今日はしんどかった」と言っても、相手の頭の中では「しんどい」が想像で再生されるだけです。
でも現場を見れば、想像が事実に変わります。この差は、思っていたよりずっと大きいものでした。
しかも、逆もありました。私のほうも、妻が想像以上に頑張ってくれていることを知ったのです。
お互いを想像ではなく事実で見るようになったら、自然と関係はよくなっていました。
これは先代や従業員との関係にも通じます
この「想像か、事実か」という話は、夫婦に限りません。
たとえば先代との溝です。後継者がよく抱える「なぜ分かってくれないのか」という思い。
あれも、お互いが相手を想像で見ているから起きるのかもしれません。
先代には後継者の苦労が想像でしか見えず、後継者には先代が背負ってきたものが想像でしか見えていない。
従業員に対しても同じです。「なぜ動いてくれないのか」と思う前に、その人の現場を一日見たら、見え方が変わるはずです。
結局、人と人の溝を埋めるのは、言葉を尽くすことではないのだと思います。
同じ景色を見る回数こそが、溝を埋めていくのではないでしょうか。
それでも身内を入れる前に確認したいこと
ここまで前向きな話をしてきましたが、「身内を入れれば必ずうまくいく」と言うつもりはありません。
そこはケースバイケースです。入れる前に、最低限あわせて確認しておきたい点があります。
- 役割と責任をはっきり決める。「家族だから何でも」は、後でもめる火種になります
- 評価の基準を、家族だからと曖昧にしない。他の従業員が見ています
- 会社の中での呼び方やルールを最初に決める(たとえば役職で呼ぶ、など)
- 合わなかったときにどうするかを、入る前に一度話しておく
こうした前提を入社前に共有しておくだけで、「想像」がぶつかって関係がこじれるリスクは大きく下げられます。
まとめ:明日からできること
人は、同じ現場に立って初めて相手を事実で見るようになります。「身内と働く=関係が悪化する」という思い込みは、一度外してみてもいいかもしれません。
明日からできることを、ひとつ挙げます。
いきなり入社という形をとる前に、まずは半日でも、同じ現場で一緒に過ごしてみてください。
相手の見え方が変わるだけでなく、自分の見られ方も変わるはずです。
溝を埋める第一歩は、言葉ではなく「同じ景色」から始まります。

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